とっぽい農園じゃ、みんな野菜と話をするんだぜ。
嫁とはケンカしても、野菜とはケンカしない主義。
日常生活に鈍感なんじゃない。
野菜に敏感なだけ。
それくらい野菜のことを想い、
野菜に終わらない青春を捧げたい!
種をまき、芽が出る。
それはすでに、ミラクル。
「嫁よ、俺を愛するんじゃなくて、
野菜を愛した俺を愛してくれ!!」
今日も農家の愛が、田舎の畑を疾走する。
青空に太陽が顔を出せば農家の一日がはじまる。
夏は全身汗だくになりながら
冬はブルブルと体を震わせて太陽と一緒に出動だ!
朝起きる度に野菜の未来が始まる。
朝露に濡れた葉っぱに太陽の光が乱反射する。
繁華街やストリートで、くすぶっている場合じゃない。
俺たちの居場所は、ただひとつ。
畑にひきこもれ!
くだらない日常に飲み込まれるより
心のまま馬鹿やっていたい。
そこにはタイムカードもなければ、上司もいない。
余計なことはどうでもいい。
土地と時間と一体になるんだ。
俺たちを待っている野菜がいる。
そして、その野菜を待っている人たちがいる。
ただそれだけ。
太陽に恥ずかしくない仕事をするのが
俺たち農家のやるべきこと。
野菜を見る目はいつまでも少年でいい、そのほうがいい。
農業は、毎日が冒険。
たった一掴みの土の中にも
数え切れないほどの栄養素や微生物があふれている。
弱い奴も、強い奴も、イイ奴も、
うるさい奴もいろんな奴がいて、
人間世界のようにバランスをとりながら共存しています。
その中で野菜という命は育つ。
こうした絶妙なハーモニーで
野菜も人間も地球に生かされている。
大地に根を張って生きようとするのは野菜も人間も同じ。
畑は宇宙であり、リングであり、ライブ会場だ。
畑という舞台で、全力で戦い、
子供のように笑いロックスターのように歌い、
風とダンスして、死に物狂いで働く。
そんな馬鹿みたいな農家が
エキサイトした野菜を作るんだ。
「農家の一日は、あっちゅう間・・・
真夏の炎天下での草刈り。
鳥獣害対策のネットを張ったり。
それでも収穫期を迎える頃に動物に盗み食いされたり。
相手が自然である限りは、思い通りには進まないし
同じ状況は二度と訪れない。
大雨の年もあれば干ばつの年もあり
暑い年もあれば寒い年もある。
同じ条件はない。
想定外のトラブルの連続に負けないでふんばる仕事・・・
昨日も今日も明後日も、首筋に汗、
背中はぐっしょり、爪の中まで泥まみれ。
「気がつけば、1日が終わっている」
農業なんて、そんなことの繰り返し。
日が暮れる頃、体がクタクタになって
終わりの時間を教えてくれる。
関節に油を差したいくらい、身体がミシミシいっている。
それでも心地よい疲労が
気持ちの良い眠りに誘ってくれる。
飲み干したビールの泡がはじける頃、
闇に包まれて野菜たちは必死に自分の中に力をためる。
「負けるなよ、お前らも」
「そりゃねえぜ!」
自然が勝手に戦いのゴングを鳴らしやがる。
狂ったような激しい風、
「助けてくれ」なんて言葉は、風にかき消される。
昨日までの出来事が思い浮かぶ。
これまでの全部が音をたてて崩れていく。
人間ごときが何をしたって及ばない。
心血注いで耕した畑を
台風が雄たけびをあげながら、えぐる。
サンドバックのような畑の変わり果てた姿。
無残に吹き飛ばされた小さな苗。
バラバラになって、砕け散った野菜の破片。
激しい雨が暴力のように畑を突っ走っていく。
畑の上を這いずり回り・・・
「まだ呼吸しているのか?」
「意識はあるのか?」
「助かるのか?」
・・・努力に裏切られる。
努力が報われない仕事。
成す術のない出来事で、ふりだしに戻る。
膨大な作業時間をかけた畑が全滅する。
天候に左右され、
思いもしない突発的な出来事で大切に育ててきた野菜が
一瞬にして絶滅する。
農業とはそういうもの。
農家だけが仰ぐ星空は滲んでいる。
行き場のない感情に支配されて
鉛色の空に中指を立てても、むなしくなるだけ。
いつだって農家の悲鳴は誰にも聞こえない。
農業なんて自然に蹴飛ばされて落ち込むことの方が多い
畑で生きてるとほんとにこんなんばっか。
もう何もかも嫌んなる。
時間をかけて、手間を重ねて、心を込めて
その結果が、自然に首しめられて、
なにやってんだかわからない。
「こんなこと、やってられるか!」
絶対に言いたくない言葉が思わず口から漏れだす。
体がナメクジみたいに溶けていく。
農業なんかやってないで、
布団に入ってぬくぬくしながら眠っていられたら、
どんなに幸せだろう。
歪んだ口が言い訳を探す。
「悲しくて泣くのはいい。
心が乾いちまうより、よっぽどいい。」
農業で辛いことあるたんびに、いつも思い出す。
心の中のタネから炎の芽がとび出た、あの瞬間を。
あのとき、心の中で一生消えない火種になったんだ。
どんなに雨が降ったって、風が吹いたって、
大雨洪水警報が何日続いたって、
この炎を消すことはできないぜ。少年も中年も関係ねえ。
大切なものだけ持って大人になれば手放さなければ、
いつまでも消えないんだ。
年齢なんて、いつだって飛び越せる。
どんな小さな火種でも、導火線に火はつけられる。
「まだ終わっちゃいない、このままでは終われない!」
農業をすれば傷を負う。いつだって農家は傷だらけだ。
だからって明日の心配をして、
今を台無しにするわけにはいかない。
俺たちは畑に就職したんだ。
こんなときこそ汚れた顔して、胸をはって立つんだ。
野菜を育てるにはロマンと覚悟が必要
そんなもん最初っから覚悟の上だ。
もう一度、運命のタイマーを回せ!
いつだって最悪の後に、とびっきりの太陽がやってくる。
打ちのめされた農家だけが見る太陽。
太陽いいぞ、もっと輝け!
しみったれた顔をしている場合じゃない。
新芽はいつだって、まっすぐ上に伸びるんだ。
時間が止まった世界、ただ作業は加速する。
台無しになった昨日を帳消しにするんだ。
農業の半分はトラブルで、
あとの半分はそれを乗り越えるためにある。
自分がちっぽけに思えたら、その農業は、きっと正しい。
こんなにぶっこわれてて、こんなにイカした世界・・・
他に知らない。
農家の愛が、荒れ果てた畑をでんぐり返しする。
ホンモノの農家になるには自然が作ったルールのなかで、
強いプレイヤーになるしかない。
それができる者にだけ
鳥肌が全身ブワァって出るくらいの景色を見ることができる。
収穫の時期、畑一面にできる
緑の宝石は黄金さえかすんで見える。
農業は、冴えない大人も、イケてる奴も、
全部まとめて畑に引きずり出すものだし、
おとなしいやつを爆発させるものだし、
そして、ただ息をしているだけの奴に
本当の勇気と情熱を与えるものなんだ。
上司と闘い、恋に悩み、
みんな幸せになりたいと思ってるように
農家だって、形はちがっても同じなんだ。
笑ったぶんだけ、楽しくなれる。
泣いたぶんだけ、優しくなれる。
流した汗の分だけ、野菜は素晴らしい!
農業には終わりがない。
農業を守るということは、人の健康を守るということ。
どんなに時代が変わっても、誰かがやらなければいけない。
今年こそ、来年こそ、
去年よりも、さらにいいものを作ってやる。
そうやって終わりのない理想を
追い続けて、毎日毎晩夢中でやってる。
顔も体も汗まみれ、泥だらけ、それがいい。
どうにもならないことがあっても
もっとなにかできたんじゃないかと
昨日を悔やんで、必死にしがみついていく。
一生懸命考えたり、悩んだり、わからなくなって、
最後の最後のところで、
逃げ場のないところまで追い詰められて、
それでも農業をやっている。
流行と無縁の場所で、憧れや夢やロマンといった、
かつて人間が本来持っていた美しさや強さが、
農業の中にはあります。
世の中に絶対なんてありません。
でもこれだけは言わせてください。